書こうかどうしようか迷ったんですが、ただの傍観者になるな、という文章を読んで「はっ」としまして、やっぱり書こうと思います。
例の森元首相の発言の報道についてです。
そもそも「わきまえる」ってどういう意味だろう、というところから考えます。
たとえば「分をわきまえる」。
「自分の地位や身の程をよく知り、出すぎたことをしないようにすることなどを意味する表現。」
とあります。身の程をわきまえろ、とかよくありますね。
この、「自分の地位」とか「身の程」とか「出過ぎたこと」とか、地位は会社などの組織ならルールとしてあるかもしれませんが、現代社会では階級制度なんてないですから完全にその場の空気とか雰囲気とかでそれこそ忖度したことが基準とされるわけです。
そんなふわっとした雰囲気の言葉を権力のある人が使うと、一気に高圧的なワードに聞こえてしまいますね。
日本では「わきまえない女」というのがトレンドワードに上がりました。私はあんまり対立構造にしてしまうのもどうかと思っているので、それ自体はなんとなくモヤモヤしながら見ています。そもそも主観的でめちゃめちゃ日本ぽい単語ですよね。基準もふわっとしていますし。
ほら、「わきまえない」っていつもこんな他人の評価。知るか。
私としては、森さんの発言の何が一番引っかかるかというと、やっぱり「女性」を主語にしてしまったことです。女性理事を増やすという話だったので仕方ないにしても、「女性が増えると会議が長引く」なんて話を出す必要なんて全くなかったはずです。
そもそも、なぜ女性を増やさなくちゃいけないかという根本的なことを理解していないのが一番の問題です。増やすことに意味があるのです。増やすからこそ見えてくる世界がある。「文科省がうるさいから」って、言っちゃってますもん。
だいたい、長い会議というのは事前の準備が悪いことが多いです(長くしたくないということであれば)。あとは司会者の腕ですね。会議を短くする方法は他にあるはずなのに、それを「わきまえない女性が多いから」みたいな話に乱暴にすり替えないでほしい。これでは、自分は無能だと言っているのと同じです。彼としてはただのリップサービスだったんでしょうが、品が悪すぎました。
とにかくいろんな点でアウトなわけですが、ただ、これをどんなに言い続けても、刺さらない人には全く刺さらないんです。基本となる考えが理解できていれば、同じような失言は繰り返さないと思いますが、彼の場合は、いくら謝罪したとしても「『わきまえない女性』という言い方がまずかったな」というそのひとつを覚えたに過ぎないと思うのです。掛け算の法則が分からなくて、一つ一つ丸暗記するみたいな感じです。3桁の掛け算まで暗記なんかできない。
ただ、こういうことを繰り返していくうちに、一定の人たちには刺さっていくと思います。言った本人に刺さらなかったとしても。
辛くても苦しくても、たとえ自分が生きているうちに実現しなかったとしても、こういう一つ一つの行動が、誰にとっても住みやすい、寛容な社会となる未来につながっていくんだと信じています。