エメラルドシティでの輝かない生活

シアトル近辺でオットと息子の三人暮らし.子育てと日々の雑感.

海外生活していて困ること(12) - 最後の父の生きている姿

ミニマリスト

両親と何とも言えない再会と交流をした後、特別に両親が住んでいる部屋に案内していただき、ふだんの様子を伺い、最後に施設長と弟の三人で今後のことと課題について話をしました。

施設を移動せざるを得ない

「はなこさんは、ここでは人気者なのでとても残念なのですが」

という施設長が申し訳なさそうな顔で切り出されました。

そんなわけで、結局、施設の移動は決定しました。

施設同士の移動はそれほど珍しいことではないので、連絡を取り合って引き継ぎもしてくださるそうです。慣れたものです。

 

私はようやく念願かなって施設の見学をしたのですが、1週間後に引っ越しが決まってしまいました。

次の施設にご挨拶に伺えるのはまた来年になってしまうな、とその時はがっかりしていました(想像よりずっと早く施設の方々にご挨拶することになりましたが)。

 

両親に話してもすぐに忘れてしまうので、弟の裁量で引っ越す当日の朝にふたりに伝えることになりました。伝えたところで、たぶん理解は難しいと思いますが、致し方ありません。

当日は私は立ち会えないので、あとはやっぱり…弟と施設の間で細かい段取りをしてもらうことになりました。

 

新しい施設は、昼間はデイケアの方も通っていらっしゃるところだそうです。

昼間はデイケアの方々と交流をしながら楽しく(?)過ごし、夜間は別の棟に移って鍵を閉めて就寝です。これなら、昼間は父も母と一緒に共有スペースにいられるので「いなくなった!」と大騒ぎする心配が減ります。トイレももちろん共用トイレなので、他人の部屋に入ってしまう心配もありません。

両親とスタッフに見送られ

そろそろお暇しましょうか、と立ち上がった時、父はまだお代わりのコーヒーを飲んでいました。よっぽど気に入ったんだと思います。

スタッフの方が「みなさんお帰りになられるので、いったんコーヒーは後にして、下までお見送りに行きましょう」と促してくださったのですが、父はまだコーヒーが飲みたい、とスプーンを見つめていました。

 

半分強制的に車いすを引かれている父を見て、もうちょっと待ってあげればよかった、と思いました。

 

1階のエントランスで、スタッフ総出でお見送りしてくださいました。

母は一緒に帰ろうと靴を履こうとしていました。これもいつもの仕草だそうです。

一緒に帰りたいのです。

 

スタッフの方々にたしなめられ、父と母は手を振って私たちを見送ってくれました。

 

私が見た、父の生きている姿はそれが最後でした。

 

小さく細くなった父が、ニコリともしない顔で私たちを見ていました。

たぶん、状況がよくわかっていなかったんだと思います。

 

帰りの新幹線で、親族全員で写真を撮り忘れたことを思い出しました。

次回は撮り忘れないようにしなくちゃ、と呑気に考えていました。

 

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