エメラルドシティでの輝かない生活

シアトル近辺でオットと息子の三人暮らし.子育てと日々の雑感.

心がざわざわする小説

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まったくすっきりしない読後感

読書の続きかと思いきや、昨日は最近のイベントについて書いてしまいました。そんなわけで、今日は読書の話の続きです。

 

以前、(補習校のサブスクリプションで)集中的に本を読んだ話を書きました。

seattle-jp.hatenablog.com

 

この時、何の気もなしに角田光代さんの「学校の青空」という本を読みました。

 

角田光代さんは、何度も芥川賞候補に挙がっている直木賞作家です(言い方…)。

彼女の小説で有名なのは「八日目の蝉」や「紙の月」でしょうか。どちらもドラマ化したり映画化したりしています。私はこれまで小説は読んでいませんでしたが、「八日目の蝉」のドラマは昔、檀れいさん主演のを見たことがあって、かなり心がざわざわしたのを覚えています。

 

この「ざわざわ」は、私の中では角田光代さんを語るうえで欠かせない感覚です。読んでいる間から読み終わるまで、ずーっと心が「ざわざわ」するのです。人間のいやーな部分を読ませる筆致でつついてくるので、自分の自尊心みたいなものがえぐられる感じがするのです。伝わるでしょうか…ざわざわするけどやめられない、謎の中毒症状があります。

 

この「学校の青空」は4つの短編が収録されていて、どれも高校生の話です。

中でも「放課後のフランケンシュタイン」は、健康を損ないかねないくらいの、暗くて自分の気持ちを持っていかれてしまう話です。主人公はいじめる側の女の子で、どうしても見ているだけでイラつくクラスメイトに、あらゆるひどいいじめをするのです。すでに吐きそうですね!

 

この本だけでもかなりへとへとになっちゃったんですが、アマゾンの Prime Reading に彼女の作品があって、思わず怖いもの見たさで読んでしまったのが、「笹の舟で海をわたる」です。

笹の舟で海をわたる

笹の舟で海をわたる

Amazon

こちらは戦争中に、親元を離れて子供だけの集団疎開を経験した二人の女性が、二十代前半の結婚前に再会し、その後親族となって人生のほとんどを一緒に過ごしていく話です。

疎開中は禁欲的かつ食糧不足が重なり、かなりひどいいじめが横行しており、主人公はその時の記憶があいまいです。もうひとりはその時にひどいいじめにあっていたという話をするのですが、記憶があいまいな主人公は、自分がいじめていないかどうか、自分に自信が持てないでいます。彼女は「あなただけが私を救ってくれた。恩人だ」というのですが、主人公は「もしかして、私に復讐するために近づいたのでは」と疑ってしまいます。

 

ざわざわしますね!

 

ふたつに共通しているのは「いじめ」なんですが、いじめる側を描く小説というのはおそらくあまりないと思うので、話のテーマとは別に、いろいろと考えてしまいました。

私が学生時代は、ネットもなかったので、それこそフィジカルないじめ全盛期でした。私の周りではせいぜい無視するくらいで、物を隠したり上履きに画びょうを入れたりトイレに閉じ込めたり上から水をかけたり、みたいなのはありませんでした(当時ニュースでよく聞いた)。

 

「笹の舟…」を読んでいたら、いじめた側はいじめたことを全く覚えていない、という記述が出てきました。これはよく聞く話です。いじめられた方はいつまでも傷になっているのに、いじめた方は一緒に遊んでいたくらいの意識しかない。

いじめられた側の人生は、それがトラウマとなって引きこもったり自分に自信を無くしたり、とにかく負の影響が多大にあるのに、いじめた側はその後、何もなかったかのように平穏に過ごして幸せな家庭を築いていたりする。

これはいったい何なんでしょう。

 

…と、何の結論も出ないまま、ざわざわした心を引きずって今に至ります。

角田光代さんはそれでも人気作家のひとりですので、人間っていうのは存外こういうざわざわした話が好きなのかもしれません。それも含めて、なんだかなぁ、という気持ちでいます。また読むと思うけど。

 

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